忍者ブログ
日々徒然。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

そう。ちょっとした駆け引きが大好きなんです。俺ってば単純だからさ。





























それは枝分かれした未来の先に、笑顔で囁かれた最後の言葉。



裏切りなんて、この世界ではよくあること。例えそれが、一度は心を通じ合わせた相手でも。この年で俺がそれを知っているのは、きっと誰よりも間近で闇に塗れた裏社会を見てきたからなのだろう。命の取引をするほどの裏切りを知らない。それは一般人、それも日本生まれ日本育ちならば尚更だろう。ここほど平和ボケしてしまっている国は無いと、俺は常々感じざるを得ない。山本のような奴を見ていると、特に。
誰にも裏切られたことが無いんだろう。みんなに愛されて育ったんだろう。きっと誰かを愛し、幸せに生きていくんだろう。それが俺にとってどれだけかけ離れた世界なのか、羨ましい世界なのか、こいつは気付きもせず生きていくんだろう。ひとかけの闇さえ背負わず、周囲を自然と明るくさせる存在。最初は、ただ嫌悪だった。次に抱いたのは、興味。そして。
「獄寺、今日寄ってってくれねぇ?勉強でわかんねぇとこがあるんだ。」
「……。」
「な、お願い!!」
「…仕方ねぇなぁ。」
こいつをこちら側に引き込んではいけない。これは俺のもう一つの使命だ。こいつはのびのび平和な日本で生きていればいい。それが一番幸せな道なのだ。この気持ちを伝えず、困らせることも無く、ただ守ることも、この感情の使い道の一つ。けれど今は、まだ何もない今だけは、傍にいたい。

「なぁ、獄寺。俺はお前の事信じてるよ。」
そんなある日、こいつは言った。何を、とも、誰を、とも言わず、ひたむきに俺の目を見て、真っ直ぐに。掴まれた手首から戸惑いと、それと同じだけの熱が広がっていく。どう返せばいいのかわからなかった。こいつは聡い。きっと俺の中の何かを見抜いて何かを思ったに違いない。俺はそれを知る術を持たないし、もしかしたら権利すら得てはいないのかもしれない。ただ、言葉を返さなければ。傷つけず突き放さず嘘をつかず、何も悟らせないような言葉を。けれど、幼い俺は俺はそんな言葉を知らない。
「…寝首かかれても、しらねぇぞ。」
やっとの事で吐き出した言葉を笑い飛ばした山本の笑顔に悲しさが一瞬浮いて消えたのを見て、俺はポケットの中で掌に爪を立てた。俺は上手く笑い返せているだろうか。瞼の奥が、熱い。



「獄寺の手にかかれて、俺は本望だよ。」
だから泣かないで。








***
最短記録。30分。あー、楽だった。

『シノ、信じてるよ。』
『あはは、寝首かかれても知らないよ?』
深夜2時、女子高生二人のメールの内容。
PR
この記事にコメントする
HN
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ [PR]


Designed by A.com
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
(08/12)
(04/07)
(11/07)
(11/03)
(10/31)
(10/29)
ブログ内検索
プロフィール
HN:
シノ
性別:
女性
アクセス解析
最古記事